無痛分娩をお考えの方へ Painless Delivery

無痛分娩をお考えの方へ

無痛分娩について

無痛分娩とは、鎮痛剤を使用して痛みを取り除きながら出産する方法です。
出産の痛みの軽減そのものが無痛分娩の第一の利点です。そのほかに、取り乱さずに落ち着いて出産できること、体力を温存しながら出産できることが利点としてあげられます。
当院では硬膜外麻酔という麻酔方法を用いた無痛分娩を行います。麻酔の効果が現れる範囲は、おなか・腰から足に限定されます。
全身麻酔ではありませんので、はっきりと目が覚めた状態で出産することが可能です。使用する麻酔薬の量は非常に少なく、薬剤が赤ちゃんに直接影響を与える心配はほとんどありません。
無痛分娩は出産の痛みを軽減しますが、痛みが完全になくなるわけではありません(和痛出産という表現が実情に近い表現かもしれません)。これは痛みの感受性には個人差が大きく、チューブからの薬剤の広がり方も人によって異なるためです。
痛みが強い場合は、安全な範囲で麻酔薬を調整します。

当院で無痛分娩可能な条件

正期産であること

硬膜外麻酔が可能であること

安全に行えること

同意書にサインがあること

前納金10万円を
納めていること

無痛分娩が行えないとき

無痛分娩を希望された妊婦さんでも、以下の場合には硬膜外麻酔が行えません。

穿刺困難(姿勢の保持困難・脊椎の変形など) 出血などによる低血圧 止血凝固異常(抗凝固薬使用中、検査値の異常) 穿刺部位(背中・腰)の感染、全身性の感染 神経変性疾患 その他(医師が不適切と判断した場合)
出産が進行している場合には、姿勢の保持困難のために硬膜外麻酔が行えないことがあります。
緊急手術がある場合などには、安全のため導入を待っていただくことがあります。
また早産(37週未満)の時期には無痛分娩は行っていません。

当院の無痛分娩の特徴

  • 麻酔に関する処置は麻酔科医師が行います。
  • 24時間無痛分娩に対応します。
    (夜間では麻酔開始までお待ちいただくことがあります。)
  • 医学的適応のない計画出産(誘発分娩)は行わず、陣痛発来時や破水のタイミングで入院していただきます。

麻酔方法

当院では硬膜外麻酔による分娩を実施しています。背骨の中にある脊髄(背中の中を通る太い神経)の周囲の硬膜外腔に、細いチューブを留置します。チューブはテープで背中に固定します。
そこから局所麻酔薬を注入する方法です。

麻酔方法

日本産科麻酔学会 出典参照

処置中は横になるか座り、背中を丸めた姿勢をとってもらいます。この姿勢がしっかりと取れると、操作が行いやすくなります。逆に、姿勢がうまく取れないと、処置に時間がかかったり行えない場合があります。
針を刺す前に背中を消毒し、細い針で局所麻酔を行います。留置を行っている最中は危険ですので動かないようにしてください。また、足や腰に痺れるような痛みがある場合は教えてください。

麻酔方法

日本産科麻酔学会 出典参照

無痛分娩の実際

無痛分娩を希望することを、妊娠健診の際に担当産科医師に伝え説明を受けます。
無痛分娩の予約をしたら、前納金10万円をお支払いいただきます。
34週頃に産科医師より産科合併症について、麻酔科医師より麻酔および麻酔合併症についての説明を受けます。内容を十分に理解されたうえで、産科・麻酔科の同意書に署名して入院時に持参してください。
(説明を受けていない妊婦さんが、急に無痛分娩を希望された場合には麻酔開始までに時間がかかり、痛みのため十分に説明を理解できない可能性もあります。また、その場合には緊急料金が適用されます。同意書に署名していても無痛分娩をキャンセルすることもできます。)
出産のために入院し、陣痛が開始すれば点滴を確保し、同時に採血をします。
陣痛の増強、また分娩の進行期と判断したタイミングで、麻酔科医師によりチューブを留置し、麻酔薬の注入を行います。麻酔薬を注入してから陣痛の痛みが軽くなるまでに20〜30分程度かかります。
麻酔薬が効いている間は、足に力が入りにくくなることがあります。転倒などの危険を防止するために、無痛分娩中の歩行は控えてもらいます。
また麻酔の影響で排尿困難になることがあります。必要に応じて尿道に細い管を入れて導尿します。
誤嚥性肺炎の危険性を減らすために、無痛分娩中は原則として飲食を禁止し、水分は点滴で行います。
痛みに早く対応するために、妊婦さん自身に麻酔薬の追加ができるボタンを押してもらい、薬を追加することを行っています。
出産後、分娩に関する処置がすべて終われば、麻酔薬の注入を中止しチューブを抜きます。

無痛分娩の合併症

硬膜外麻酔による無痛分娩は、多くの妊婦さんにとって安全に行うことができます。
しかし、以下に示す合併症や、その他の合併症が起こることがあります。合併症が起こった場合には適切に対応しますが、入院期間を延長することや、手術などの治療を要することがあります。

低血圧

麻酔の効果によって、母体の血圧はいくらか低下します。低血圧の程度によっては、嘔気や嘔吐、胎児の一過性徐脈が起こります。
血圧を上げる薬で速やかに対処することが可能です。低血圧の予防のために、麻酔前に点滴を行います。

分娩中の発熱

無痛分娩中には、無痛分娩を行わない場合にくらべて、母体の発熱が起こりやすくなります。

頭痛

麻酔後に頭痛が起こることがあります。原因の一つとして、硬膜外麻酔の内側にある硬膜を穿刺することで起こると思われます。(脊髄漏)多くは数日で軽快しますが、治療を要することがあります。

背部痛

針を刺した部位の痛みがしばらく気になることがあります。まれに背中に感染がおこり、腫れや痛みを起こすことがあります。

アレルギー

麻酔を用いる薬剤に対するアレルギーが起こることがあります。重症のアレルギーはまれですが、起こった場合には緊急対応を要します。

硬膜外腔の感染や血腫

約10万人に1人と非常にまれにしか起こらない合併症です。感染による膿瘍や血腫が脊椎を圧迫すると足のしびれや麻痺を起こすことがあり、手術などの緊急治療を要します。

一時的なしびれや麻痺

出産によって骨盤を通る神経が圧迫され、一時的に排尿を行うことが難しくなることや、足のしびれや感覚の鈍さを感じることがあります。通常は短期間で軽快しますが、まれに症状が数か月続くこともあります。

全脊椎麻酔

硬膜の外ではなく、中に麻酔薬が過剰に入ると全脊椎麻酔となり、意識消失や呼吸停止が起こります。薬液のテスト注入によって、硬膜外の適切な位置にチューブが入っていることを確認し、全脊椎麻酔が起こらないようにしています。
万が一全脊椎麻酔となった場合には、麻酔の効果が切れるまで人工呼吸などの集中治療を行います。

局所麻酔薬中毒

硬膜外チューブが血管内にはいることが稀にあります。局所麻酔薬が血管内に直接投与されると、耳鳴り、金属味、口周囲の違和感、意識レベルの変化、痙攣などが起こり全身管理を必要とします。
局所麻酔薬の投与時は少量ずつ投与します。

分娩への影響

胎盤胎児機能不全

前述のように血圧低下に伴い、胎児心拍数の異常が出現することがあります。
一時的なもので通常は回復しますが、回復しない時には胎児のストレスが大きいため、器械分娩や帝王切開が必要になります。

過強陣痛

陣痛の痛みがとれると、子宮収縮が一時的に強くなる過強陣痛が起こることがあります。場合によっては子宮の収縮を和らげる薬を使用します。

遷延分娩

無痛分娩では痛みが和らぐとともに、陣痛が微弱になることがあります。ときに子宮口が全開大した後の第2期の遷延が増加するといわれています。その結果、陣痛促進剤の使用と吸引分娩・鉗子分娩の頻度が上がります。

帝王切開・器械分娩

遷延分娩の結果、器械分娩が必要となる確率が高くなるといわれています。一方で帝王切開が増加することはないといわれています。

費用

無痛分娩は保険診療範囲外ですので、自費診療になります。
費用は以下の通りです。

無痛分娩
(時間の長短にかかわらず、一律料金)…… 分娩費用+10万円

緊急無痛分娩(緊急に行う場合)………………………分娩費用+15万円

※硬膜外カテーテルが入った時点から費用は発生します。
(帝王切開となった場合や間に合わない、鎮痛効果が得られない等も費用が発生します。)
※無痛分娩を実施しなかった場合、前納金は返金します。

予約枠

当院では安全に無痛分娩ができるよう、予約枠の数を制限させていただいてます。
詳しくはスタッフにお尋ねください。


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